1.「早明浦ダム再生事業上流仮締切設備の設計・施工 新たな挑戦〜特許取得と国内初技術採用〜」
独立行政法人水資源機構 吉野川上流総合管理所 早明浦ダム再生事業推進室 主査
江田 友也
独立行政法人水資源機構が初めて実施する早明浦ダム再生事業では、通常の水運用を維持するため工事制限水位を設けず設計を行った。上流仮締切設備には浮体式と従来式を組み合わせたハイブリッド扉体を採用し、抜水後の浮力に対応する「浮力対策工兼戸当り構造」を新開発し特許取得した。施工面では飽和潜水作業でヘリウムガスリサイクル装置を国内初導入し、コスト縮減を図った。
本論文は、早明浦ダム再生事業における上流仮締切設備工事の設計・施工改良について報告するものである
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2.「台形CSGダム建設の締固め品質管理試験の省人化を実現した面的測定システム」
鹿島建設株式会社 技術研究所 土質・地盤グループ 主任研究員
田中 恵祐
台形CSGダムの建設では高速大量連続施工を前提とし、品質管理にも迅速性が求められる。従来の現場密度試験は削孔や機器運搬に多くの人員と時間を要し、広域面を数点で管理する抜き取り検査に限られていた。筆者らは省人化と面的管理を目的に、比抵抗法を用いた「現場密度の面的測定システム(Geo-DX CompactionR)」を開発し、成瀬ダム堤体打設工事に適用した。 本論文は、本システムの概要と成瀬ダムでの適用実績および導入効果について報告するものである。
3.「水資源機構におけるダム運用に関する新たな取り組みについて」
独立行政法人水資源機構 ダム事業部ダム管理課 主任
河内 達也
近年、気候変動やカーボンニュートラルへの対応として、ダム運用の高度化が進められている。水資源機構は2018年からSIP、2023年からBRIDGEに参画し、長期降雨予測を活用した高度運用を検討、モデルダムで実操作への導入を進めているところである。 本論文は、水資源機構におけるダム運用に関する新たな取り組みとして、ダム運用高度化の事例及びアンサンブル降雨予測の活用に向けた検討内容について報告するものである。
4.「小屋ダムの令和6年能登半島地震時の挙動に関する2次元解析と現地調査結果の比較検討」
国土交通省国土技術政策総合研究所 河川研究部 大規模河川構造物研究室 主任研究官
金縄 健一
2024年1月1日の令和6年能登半島地震は北陸地方に甚大な被害をもたらした。震央から約12.2kmに位置する中央土質遮水壁型ロックフィルダムの小屋ダムでは、底部監査廊の地震計で最大水平加速度528cm/s2が観測された。 本研究は、同地震時に小屋ダムで観測された堤体挙動を対象に等価線形化手法による2 次元動的解析を実施し、その再現結果を国土技術政策総合研究所等による地震後の現地調査で確認された変状等と比較することで、地震時における堤体の安定性について考察したものである。
5.「ダム再開発工事の仮排水トンネルにおける3次元流体解析を用いた流況予測」
株式会社大林組 生産技術本部ダム技術部
藤原 皓
近年の水害リスク増大に対応し、国は流域治水を推進、その一環として既設ダムの再生が注目されている。従来の水理模型実験は迅速対応に課題があり、筆者らは3次元流体解析で放流時の流れ場再現に取り組み、水位予測で高精度を確認している。 本研究は、3次元流体解析を新丸山ダム仮排水トンネルの1/50モデルに適用し、放流能力に影響する要因を検討しモデルを最適化して、その結果を基に実スケール解析を行い、妥当な流量評価の可能性を確認したものである。 6.「高圧放流設備周辺の堆砂形状制御手法に関する予備検討」
国立研究開発法人土木研究所 河道保全研究グループ 水工チーム 交流研究員
南家 岳史
近年、計画を上回る堆砂進行により、高圧放流設備が堆砂や沈木で機能を喪失するリスクが顕在化している。従来の浚渫は高コストで再堆積の懸念もあり、持続的な管理手法とは言い難い。 本研究は、水位低下を伴わない排砂手法として知られるPressure Flushing(PF)に着目し、PFで形成される洗掘形状Flushing Cone(FC)の管理を検討したものである。さらに高圧放流設備は通砂を想定していないものの、機能維持の観点からFC形状の制御が重要であるため、水理模型実験を通じてその制御手法に関する予備的検討を行ったものである。
7.「農業用ダムを対象とした洪水調節機能の最大限活用を図るための洪水時操作のパターン化の提案」
一般財団法人水源地環境センター 研究第一部 主任研究員
最上 友香子
戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期課題「スマート防災ネットワークの構築」サブ課題D流域内の貯留機能を最大限活用した被害軽減の実現において、農業用ダムの洪水調節機能を最大限に活用するためにダム操作方法を事前検討に基づきリアルタイムで操作提案を行うシステムの研究開発に取り組んでいる。 本研究は、これらのシステム開発状況を紹介するとともに、本システムの開発に際して実施した治水効果と利水安全度のバランスを考慮した洪水時操作のパターン化手法を提案するものである。
以上のように、いずれの研究発表も最新の技術開発に取り組んだ(あるいは取り組んでいる)成果をとりまとめたものであり、今後、ダムの調査・設計・施工・管理さらには再開発にかかる技術の高度化や合理化に寄与するものと期待されます。
7編の研究発表に対して、優秀発表賞選考委員会による審査が行われ、優秀発表賞として次の1編が選定され、表彰式が行われました。表彰式では、ダム工学会優秀発表賞選考委員会 藤田副委員長より各研究発表に対する講評および審査結果の発表がなされ、ダム工学会 角会長より受賞者に賞状ならびに副賞が授与されました。
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